2008.07.23 (Wed)
母体の糖尿病と肥満が子の青年期の2型糖尿病に関連
母体の糖尿病と肥満の子宮内への影響が子の青年期の2型糖尿病に強く関連することが症例対照研究によって明らかとなり、その研究結果から予防策が示唆される。Medscape
【7月16日】母体の糖尿病と肥満の子宮内への影響が子の青年期の2型糖尿病と強く関連することを示した症例対照研究の結果が、『Diabetes Care』7月号に掲載されている。小児期の肥満に加え、肥満合併妊娠の増加に的を絞った予防策が必要であると考えられる。
「妊娠期の母体の肥満は、顕性(frank)の糖尿病がみられない場合でも、出生児の肥満や代謝症候群の症状といった生涯にわたる代謝異常とも関連するという仮説への関心が高まりつつある」と、コロラド大学デンバー校のDana Dabelea, MDとSEARCH Case-Control研究の共同研究者らは述べている。「母体の糖尿病および肥満の子宮内への影響と、多様な青年期の2型糖尿病との関連性についてのデータは乏しい。そこで、SEARCH Case-Control研究に参加したアフリカ系アメリカ人、ヒスパニック系白人、非ヒスパニック系白人青年を対象に、こうした関連性を検討した」
研究のための来院中に、10-22歳の2型糖尿病の青年79例の実母と、糖尿病ではない対照青年190例の実母に、母体の糖尿病と肥満の子宮内への影響を思い出させた。
糖尿病ではない対照青年と比較して、2型糖尿病の青年は母体の糖尿病または肥満の子宮内への影響を受けた傾向が高かった(それぞれP<0.0001)。出生児の年齢、性別、人種、または民族について補正したところ、母体の糖尿病の影響(オッズ比[OR]5.7、95%信頼区間[CI]2.4 - 13.4)と母体の肥満の影響(OR 2.8、95% CI 1.5 - 5.2)は2型糖尿病と独立して関連した。
その他の周産期因子および社会経済因子について補正しても、これらの関連性への影響はみられなかったが、出生児の肥満度指数(BMI)を加えると、肥満の子宮内への影響と2型糖尿病の子宮内への影響の関連性のORが低下した(OR 1.1、95% CI 0.5 - 2.4)。母体の糖尿病と肥満の子宮内への影響は、青年期の2型糖尿病の47.2%(95% CI 30.9 - 63.5)にみられた。
研究の限界としては、思い出しバイアスまたは選択バイアスの可能性などが挙げられる。
「母体の糖尿病と肥満の子宮内への影響は、子の青年期の2型糖尿病と強く関連している」と、本研究の著者らは述べている。「小児期の肥満に加え、肥満と糖尿病を合併した妊娠の増加に的を絞った予防策が必要であると考えられる」
Diabetes Care. 2008;31:1422-1426.
【7月16日】母体の糖尿病と肥満の子宮内への影響が子の青年期の2型糖尿病と強く関連することを示した症例対照研究の結果が、『Diabetes Care』7月号に掲載されている。小児期の肥満に加え、肥満合併妊娠の増加に的を絞った予防策が必要であると考えられる。
「妊娠期の母体の肥満は、顕性(frank)の糖尿病がみられない場合でも、出生児の肥満や代謝症候群の症状といった生涯にわたる代謝異常とも関連するという仮説への関心が高まりつつある」と、コロラド大学デンバー校のDana Dabelea, MDとSEARCH Case-Control研究の共同研究者らは述べている。「母体の糖尿病および肥満の子宮内への影響と、多様な青年期の2型糖尿病との関連性についてのデータは乏しい。そこで、SEARCH Case-Control研究に参加したアフリカ系アメリカ人、ヒスパニック系白人、非ヒスパニック系白人青年を対象に、こうした関連性を検討した」
研究のための来院中に、10-22歳の2型糖尿病の青年79例の実母と、糖尿病ではない対照青年190例の実母に、母体の糖尿病と肥満の子宮内への影響を思い出させた。
糖尿病ではない対照青年と比較して、2型糖尿病の青年は母体の糖尿病または肥満の子宮内への影響を受けた傾向が高かった(それぞれP<0.0001)。出生児の年齢、性別、人種、または民族について補正したところ、母体の糖尿病の影響(オッズ比[OR]5.7、95%信頼区間[CI]2.4 - 13.4)と母体の肥満の影響(OR 2.8、95% CI 1.5 - 5.2)は2型糖尿病と独立して関連した。
その他の周産期因子および社会経済因子について補正しても、これらの関連性への影響はみられなかったが、出生児の肥満度指数(BMI)を加えると、肥満の子宮内への影響と2型糖尿病の子宮内への影響の関連性のORが低下した(OR 1.1、95% CI 0.5 - 2.4)。母体の糖尿病と肥満の子宮内への影響は、青年期の2型糖尿病の47.2%(95% CI 30.9 - 63.5)にみられた。
研究の限界としては、思い出しバイアスまたは選択バイアスの可能性などが挙げられる。
「母体の糖尿病と肥満の子宮内への影響は、子の青年期の2型糖尿病と強く関連している」と、本研究の著者らは述べている。「小児期の肥満に加え、肥満と糖尿病を合併した妊娠の増加に的を絞った予防策が必要であると考えられる」
Diabetes Care. 2008;31:1422-1426.
2007.12.18 (Tue)
子供の喘息被患率が過去最高に
子供の喘息被患率が過去最高に 日経メディカルオンライン
10年前の2倍に
喘息の子供が年々増加しており、2007年度に過去最多を更新したことが、12月14日に文部科学省が公表した「平成19年度学校保健統計調査速報」で明らかになった。
調査は、全国の幼稚園から高等学校を対象に、満5歳〜17歳までの全児童、生徒および幼児の4.7%を抽出。学校保健法による健康診断の結果に基づき、2007年4月〜6月の間に実施した。
その結果、2007年度の喘息にかかっている子供の割合(被患率)は、小学校3.9%、中学校3.1%、高等学校1.8%だった。幼稚園以外の学校段階で年々増加傾向にあり、昨年に比べ、それぞれ0.2ポイント、0.1ポイント、0.1ポイントの上昇だった。一方で、幼稚園では2.2%と、昨年の2.4%に比べ3年ぶりに減少していた。被患率は、どの学校段階でも、10年前の2倍以上になっていることが分かった。
年齢別に見ると、6歳〜13歳では各年齢で被患率が3%を超えており、中でも6歳で最も高く、4.4%だった。
また同調査では、蓄膿症、アレルギー性鼻炎などの鼻・副鼻腔疾患にかかっている子供も、全学校段階で昨年度より増加していることが分かった。中学校では11.1%、高等学校では8.4%で、それぞれ昨年度より0.4ポイント、0.2ポイントの上昇だった。
小・中・高等学校では、10年前に比べ約2ポイント増加しており、被患率上昇に歯止めがかからない現状が明らかになった。
同調査は、児童、生徒及び幼児の発育や健康状態を明らかにすることを目的に、1948年から毎年実施している。
10年前の2倍に
喘息の子供が年々増加しており、2007年度に過去最多を更新したことが、12月14日に文部科学省が公表した「平成19年度学校保健統計調査速報」で明らかになった。
調査は、全国の幼稚園から高等学校を対象に、満5歳〜17歳までの全児童、生徒および幼児の4.7%を抽出。学校保健法による健康診断の結果に基づき、2007年4月〜6月の間に実施した。
その結果、2007年度の喘息にかかっている子供の割合(被患率)は、小学校3.9%、中学校3.1%、高等学校1.8%だった。幼稚園以外の学校段階で年々増加傾向にあり、昨年に比べ、それぞれ0.2ポイント、0.1ポイント、0.1ポイントの上昇だった。一方で、幼稚園では2.2%と、昨年の2.4%に比べ3年ぶりに減少していた。被患率は、どの学校段階でも、10年前の2倍以上になっていることが分かった。
年齢別に見ると、6歳〜13歳では各年齢で被患率が3%を超えており、中でも6歳で最も高く、4.4%だった。
また同調査では、蓄膿症、アレルギー性鼻炎などの鼻・副鼻腔疾患にかかっている子供も、全学校段階で昨年度より増加していることが分かった。中学校では11.1%、高等学校では8.4%で、それぞれ昨年度より0.4ポイント、0.2ポイントの上昇だった。
小・中・高等学校では、10年前に比べ約2ポイント増加しており、被患率上昇に歯止めがかからない現状が明らかになった。
同調査は、児童、生徒及び幼児の発育や健康状態を明らかにすることを目的に、1948年から毎年実施している。
2007.12.17 (Mon)
川崎病の関連遺伝子発見
川崎病の関連遺伝子発見 病気解明や治療に一歩 共同通信社
乳幼児を中心に発熱、発疹(ほっしん)などの症状が出て、心臓に冠動脈瘤(りゅう)ができて重症になる場合がある「川崎病」の発症にかかわる遺伝子を見つけたと、理化学研究所などの日米共同チームが16日、米科学誌ネイチャージェネティクス電子版に発表した。
川崎病の症状は、過剰な免疫反応によるとみられるが原因は不明。関連遺伝子が見つかったのは初といい、病気の解明や重症化の予防につながるのではないかという。
チームは、日米の川崎病の患者約640人と健康な人約1000人の遺伝子を調べた。「ITPKC」という遺伝子に塩基配列のうち1つが異なる「多型」があり、特定の型の人は、そうでない人の約1.9倍川崎病になりやすいことを見つけた。
ITPKCが作るタンパク質は免疫細胞の活性を抑えるとみられる。研究チームは、特定の型が原因でこのタンパク質が少なくなり、過剰な免疫反応が起きて川崎病の発症や重症化につながるとみている。
同研究所の尾内善広(おのうち・よしひろ)上級研究員は「複数あるとみられる遺伝要因のうちの1つで、治療法開発の第一歩になるだろう」と話している。
乳幼児を中心に発熱、発疹(ほっしん)などの症状が出て、心臓に冠動脈瘤(りゅう)ができて重症になる場合がある「川崎病」の発症にかかわる遺伝子を見つけたと、理化学研究所などの日米共同チームが16日、米科学誌ネイチャージェネティクス電子版に発表した。
川崎病の症状は、過剰な免疫反応によるとみられるが原因は不明。関連遺伝子が見つかったのは初といい、病気の解明や重症化の予防につながるのではないかという。
チームは、日米の川崎病の患者約640人と健康な人約1000人の遺伝子を調べた。「ITPKC」という遺伝子に塩基配列のうち1つが異なる「多型」があり、特定の型の人は、そうでない人の約1.9倍川崎病になりやすいことを見つけた。
ITPKCが作るタンパク質は免疫細胞の活性を抑えるとみられる。研究チームは、特定の型が原因でこのタンパク質が少なくなり、過剰な免疫反応が起きて川崎病の発症や重症化につながるとみている。
同研究所の尾内善広(おのうち・よしひろ)上級研究員は「複数あるとみられる遺伝要因のうちの1つで、治療法開発の第一歩になるだろう」と話している。
2007.12.17 (Mon)
「タミフルが直接、異常行動を起こしている可能性は低い」
「タミフルが直接、異常行動を起こしている可能性は低い」 日経メディカルオンライン
研究結果の発表受けて、厚労省の臨床WGがコメント
リン酸オセルタミビル(商品名:タミフル)服用と異常行動発現との因果関係を確認するために国が実施した調査の1つ、「インフルエンザ罹患に伴う異常行動研究」(主任研究者:国立感染症研究所感染症情報センター長・岡部信彦氏)の結果が16日に発表された。「リン酸オセルタミビルの臨床的調査検討のためのワーキンググループ」(臨床WG)の中心メンバーの1人、日大精神医学系教授の内山真氏は、この研究結果について、「タミフルを服用したかどうかによらず、インフルエンザ罹患時に異常行動が発現することが明らかになった」などとまとめた。
今回発表されたのは、2006/07シーズンに臨床医が経験したインフルエンザ患者の重度の異常行動137例についての解析結果。全国の医療機関から報告された164例のうち、日時が不明なものや、31歳以上の症例を除外した。なお、2007/08シーズンの調査は現在、実施されているところで、来春以降に結果が発表される予定だ。(関連記事:2007.12.6 症例報告求む!「インフルエンザと異常行動」)
調査では、重度の異常行動を、(1)突然走り出した、(2)飛び降りた (3)その他、予期できない行動であって、制止しなければ生命に影響が及ぶ可能性のある行動―――と定義した。解析対象となった137例で調べたところ、82人(60%)がタミフルを使用していたが、52人(38%)は使用していなかった。不明は3人(2%)だった。ザナミビル(商品名:リレンザ)、アセトアミノフェンの使用状況は以下の通り。
表1 2006-07シーズンに異常行動を起こしたインフルエンザ患者137人の服薬状況
使用していた 使用していない 不明
タミフル 82人(60%) 52人(38%) 3人(2%)
リレンザ 9人(7%) 105人(76%) 23人(17%)
アセトアミノフェン 51人(37%) 53人(39%) 33人(24%)
つまり、異常行動を起こしたインフルエンザ患者の6割がタミフルを使用していたことが分かった一方で、4割は、タミフル不使用でも重度の異常行動を起こしていることが分かったことになる。
137人の患者の性別は、101人(74%)が男性で、36人(26%)が女性。男性に重度の異常行動が出やすいことが示唆された。
さらに、137人のうちから10歳未満(56人)と10歳代(69人)を抽出して、厚労省から「タミフル服用後の異常行動について」(緊急安全性情報の発出の指示)が発せられた3月20日を境に(2007.3.21 タミフル、一転して「10代は原則使用禁止」に)、異常行動の発生率に大きな変化があったかどうかを見たのが表2だ。
3月20日の前後で全報告数に対する比率を見ると、10歳未満と10歳代で有意な差は認められなかった。正確な数字は不明だが、3月20日を境に、10歳代インフルエンザ患者へのタミフル処方は大幅に減少しているはず。にもかかわらず、10歳代の異常行動の報告数は、3月21日以降も特別減った様子がなかった、と解釈できる。
表2 年齢別に見た3月20日以前と3月21日以降の患者数
3月20日以前(90人) 3月21日以降(35人)
10歳未満(56人) 39人 17人
10歳代(69人) 51人 18人
内山氏は、「インフルエンザ罹患時に、インフルエンザ脳症の定義には当てはまらない脳の異常が起こり、重大な事故につながる可能性があることが分かった。このことは事故を防ぐ上でも重要だ。タミフルが直接、異常行動を起こしている可能性は低くなったと考えるが、異常行動が起こるリスクを高める可能性は残されている。今後は、その点の解明が焦点になる」などと述べた。
研究結果の発表受けて、厚労省の臨床WGがコメント
リン酸オセルタミビル(商品名:タミフル)服用と異常行動発現との因果関係を確認するために国が実施した調査の1つ、「インフルエンザ罹患に伴う異常行動研究」(主任研究者:国立感染症研究所感染症情報センター長・岡部信彦氏)の結果が16日に発表された。「リン酸オセルタミビルの臨床的調査検討のためのワーキンググループ」(臨床WG)の中心メンバーの1人、日大精神医学系教授の内山真氏は、この研究結果について、「タミフルを服用したかどうかによらず、インフルエンザ罹患時に異常行動が発現することが明らかになった」などとまとめた。
今回発表されたのは、2006/07シーズンに臨床医が経験したインフルエンザ患者の重度の異常行動137例についての解析結果。全国の医療機関から報告された164例のうち、日時が不明なものや、31歳以上の症例を除外した。なお、2007/08シーズンの調査は現在、実施されているところで、来春以降に結果が発表される予定だ。(関連記事:2007.12.6 症例報告求む!「インフルエンザと異常行動」)
調査では、重度の異常行動を、(1)突然走り出した、(2)飛び降りた (3)その他、予期できない行動であって、制止しなければ生命に影響が及ぶ可能性のある行動―――と定義した。解析対象となった137例で調べたところ、82人(60%)がタミフルを使用していたが、52人(38%)は使用していなかった。不明は3人(2%)だった。ザナミビル(商品名:リレンザ)、アセトアミノフェンの使用状況は以下の通り。
表1 2006-07シーズンに異常行動を起こしたインフルエンザ患者137人の服薬状況
使用していた 使用していない 不明
タミフル 82人(60%) 52人(38%) 3人(2%)
リレンザ 9人(7%) 105人(76%) 23人(17%)
アセトアミノフェン 51人(37%) 53人(39%) 33人(24%)
つまり、異常行動を起こしたインフルエンザ患者の6割がタミフルを使用していたことが分かった一方で、4割は、タミフル不使用でも重度の異常行動を起こしていることが分かったことになる。
137人の患者の性別は、101人(74%)が男性で、36人(26%)が女性。男性に重度の異常行動が出やすいことが示唆された。
さらに、137人のうちから10歳未満(56人)と10歳代(69人)を抽出して、厚労省から「タミフル服用後の異常行動について」(緊急安全性情報の発出の指示)が発せられた3月20日を境に(2007.3.21 タミフル、一転して「10代は原則使用禁止」に)、異常行動の発生率に大きな変化があったかどうかを見たのが表2だ。
3月20日の前後で全報告数に対する比率を見ると、10歳未満と10歳代で有意な差は認められなかった。正確な数字は不明だが、3月20日を境に、10歳代インフルエンザ患者へのタミフル処方は大幅に減少しているはず。にもかかわらず、10歳代の異常行動の報告数は、3月21日以降も特別減った様子がなかった、と解釈できる。
表2 年齢別に見た3月20日以前と3月21日以降の患者数
3月20日以前(90人) 3月21日以降(35人)
10歳未満(56人) 39人 17人
10歳代(69人) 51人 18人
内山氏は、「インフルエンザ罹患時に、インフルエンザ脳症の定義には当てはまらない脳の異常が起こり、重大な事故につながる可能性があることが分かった。このことは事故を防ぐ上でも重要だ。タミフルが直接、異常行動を起こしている可能性は低くなったと考えるが、異常行動が起こるリスクを高める可能性は残されている。今後は、その点の解明が焦点になる」などと述べた。
2007.12.12 (Wed)
肥満予報:子供の肥満の蔓延で、若年成人であってもCHD有病率が跳ね上がる
小児・十代に増えつつある過体重と肥満の現在の有病率を基に将来の成人期での冠動脈疾患の有病率が、2つの研究で予測された Medscape
WebMDの専門ニュースサービスHeartwireより
【12月7日】『New England Journal of Medicine』2007年12月6日号に発表された2つの研究は、新しく、そしてショッキングなニュースである。それは、今日の小児・十代で過体重と肥満の有病率が跳ね上がりつつあることから、近い将来の心疾患の爆発的な蔓延が予想されるという展望だ[1,2]。Dr Jennifer L Baker(予防医学研究所、デンマーク、コペンハーゲン)らによる1つ目の論文では、非常に大規模なレトロスペクティブ(後ろ向き)コホート研究によって、小児の肥満指数(BMI)が25歳以降の成人期での致死性/非致死性の冠動脈疾患(CHD)に有意に連関していることが示された。Dr Kirsten Bibbins-Domingo(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)らによる2つ目の論文では、コンピュータを使ったモデルの結果、現在の十代の肥満率に基づけば2035年にはCHD有病率が現在の5%から16%増えることが報告された。
CHDによる死亡率はまだまだ上がり続け、現在の十代の若者が35歳から50歳になるころには、19%も増えるだろう。「我々の研究の結果はある程度は予想されていた。しかし、心疾患と死亡が増えることは予想していたが、これほどの大きさで増えることには衝撃を受けた。」
子供のBMI、大人のCHD
Baker博士らは、学童として身長・体重が測定されているデンマーク人25万人以上における心疾患事象の発生率を調べ、500万人年以上の追跡を行った。博士らによると、成人になってCHDで死亡するかCHDの診断を受けた者は男性が10,235名、女性が4,318名おり、これらの事象は、男性では7歳から13歳までの、女性では10歳から13歳までのBMIに連関していた。
「今回の研究は、この種のものの中では最大であり、小児期のBMIが大きすぎると成人期での心疾患のリスクが増えることを初めて説得力をもって示した。」
記述によれば、小児期でのBMIが大きいほど、成人期の心疾患リスクが高くなる。例えば、Baker博士らの試算によると、13歳の男児の体重が平均よりも11.2 kg多いと、その子が60歳までにCHDになる確率は33%増える。
「その連関が直線的であったことに我々はひどく驚いた」とBaker博士は語っている。「BMIの閾値のようなものがあって、その閾値でリスクが劇的に上昇したり、横ばいになったりするものだと予想していた。小児は体重がますます増えつつあり、それもどんどんと低年齢化が進んでいるので、我々の研究の結果は、今の世代でのとても多くの小児に、将来の心疾患が差し迫っていることを示している。」
BMIに連関するCHDリスクは年齢が上がっても増大すると、Baker博士らは記述している。成人においてはBMIに伴って心疾患が発現するリスクは中等度だが、13歳まではこのリスクはもっと高くなる。「これらを総合すると、小児期のこの短期間であっても、介入を行って小児が適正な体重を達成・維持するのを助ければ、将来の健康が有害な結果となることから彼らを護ることができることを、我々の研究は示している」とBaker博士はheartwireに対して語った。
早期に蔓延するCHDを予測するコンピュータモデル
Bibbins-Domingo博士による論文では、2000年での十代における過体重蔓延率(男子が16.7%、女子が15.4%)のデータに、十代での体重が成人期での肥満につながる履歴傾向のデータを組み合わせて、その十代が35歳になる2020年における肥満蔓延率を、コンピュータを使って予測した。その分析によると、2020年の35歳での肥延蔓延率は増大して、男性が30%から37%、女性が34%から44%になる。現在の同じ年代の肥満蔓延率は男性が25%、女性が32%である。この率の増加によって若年成人におけるCHDの事象と死亡が上昇し、その傾向は中年期でも続くと著者らは予測している。Bibbins-Domingo博士らの計算によれば、2035年までに、米国1カ国で肥満によるCHD症例がさらに10万例増えると見られている。
この知見は、このコンピュータモデルが高齢者のCHDを予測したのではなく、一般的には心疾患の心配をしない時期である若年の成人で予測したものであるために特に衝撃的だったと、Bibbins-Domingo博士はheartwireに語った。「この年齢は、さほど頻繁には医者に行かない世代だ。働き盛りで家族も増え、心疾患はもっと先に起こる何かくらいにしか考えていない年ごろだ。実際には、現在の十代における過体重蔓延率が上昇している結果として、心疾患のパターンに変化が起こり、こうした若い世代で心疾患が見られ始めているのだ。」
ここで重要なのは、博士らの論文で調べているのは過体重による将来のCHDへの影響のみである点だ。過体重の小児はもっと早い時期に関連CHDリスク因子を発現する傾向も高いことは、Baker博士らの論文も含めた莫大な数の研究で示されているが、Bibbins-Domingo博士らのモデルではその可能性は含められていないのである。
「増えつつあるエビデンスを信用して考慮に入れるのであれば、我々の今回の試算はむしろ過小評価にあたる」とBibbins-Domingo博士がheartwireに語った。博士らが自分たちのモデルにBaker博士らの試算を組み込んでみると、CHD率の予測値は発表された論文に記載の値より大きくなった。「心臓でのCHD過程の発現の仕方に対しては、脂肪それ自体の何かや脂肪の分布が時間経過とともに有害な影響を与えている可能性があり、したがって、心臓の障害の一部はこうした早期の年代で進行する可能性があることを示すエビデンスが増えつつある」と博士は言う。
たくさんの未知の変数
Bibbins-Domingo博士らは、自分たちのモデルがすべてを考慮に入れているわけではなく、特に、高脂血症、高血圧、糖尿病、そして肥満自体といったCHDリスク因子に対する優れた予防薬や治療法が開発される可能性がそうした重要な因子の一つであることを認めている。
「例えば、糖尿病になる確率を下げ、肥満から劇的に戻せるような治療が将来登場するかどうかは分らない。したがってそうしたことはこのモデルには組み込まれていない」と博士は認めている。「ただしこれだけは言える。そうした介入は効果がかなり大きく、この傾向を変えることができるだろうし、かなり若い世代でそうした介入を行うべきである。若年成人や十代を何らかの療法で介入することで正すことができるようになるべきであり、その療法も薬の使い方をどうするというような考え方から変わるべきである。」
実際、この2つの論文に込められている最大のメッセージは、患者、医師、政策決定者はCHDの予防戦略や治療を始める場合にこれまで持っていた既存の概念を抜本から見直す必要がある、というものだ。今日用いられている降圧剤やコレステロール降下剤ですら、若年患者で試験が充分に行われているわけではなく、成人期のほぼ全体の長さにわたってこうした薬剤を使用し続けることの安全性を支持するエビデンスもほとんどない。
Bibbins-Domingo博士らの指摘によれば、博士たちの研究には移民による米国人口の変化や人口特性の推移についても考えに入れられていない。しかし、どちらかといえば過体重や肥満の蔓延率は少数民族で高く、博士らのモデルによる疾患予測は、アフリカ系アメリカ人、ラテン系、ネイティブアメリカンといった特定の民族人種集団において過小評価する傾向があると博士はheartwireに述べている。
政策面はともかく解決策は簡単
この2つの論文に関連する『Perspective』欄において、Dr David S Ludwig(ボストン小児病院、マサチューセッツ州)が、肥満の蔓延において重なり合う4つの時期についてと、有意義な対策が切り詰められた場合に必然的に立ちはだかる主要な障壁について述べている。Ludwig博士のPerspective記事に付随するオンラインインタビューの中で博士は、小児の肥満の問題に対する認識が高まっているにもかかわらず、この問題が将来に大きな影響を与えることが人々の間でほとんど理解されていないと指摘している。
「45歳の過体重の人が55歳には2型糖尿病を発現し、65歳には脳卒中、心臓発作、腎不全を起こすようなものだ。しかしその時計の刻みが10代で始まるのであれば、話は大きに変わってくる」と博士は言う。
博士はこの問題を地球温暖化になぞらえた。小児の肥満蔓延は「科学的エビデンスがすべて出そろうまでに行動を起こさなければならない差し迫った危機である」と博士は書いている。しかし地球温暖化とは違い、小児の肥満蔓延の解決策は、公益性を中心に据えることへの支持を得て包括的な戦略をとるならば、比較的簡単である。
「政治的には難しいかもしれないが、そうした簡単な決断と行動でもって蔓延率の増加を食い止め、最終的には蔓延率を下げられると確信できるだけの根拠が充分にある」とLudwig博士はオンラインの音声インタビューの中で明言している・
1. Baker JL, Olsen Lina W, Sorensen TIA. Childhood body-mass index and the risk of coronary heart disease in adulthood. N Engl J Med. 357:2329-2337.
2. Bibbins-Domingo K et al. Adolescent overweight and future adult coronary heart disease. N Engl J Med. 2007;357:2471-2479.
3. Ludwig DS. Childhood obesity?the shape of things to come. N Engl J Med. 2007;357:2325-2327.
WebMDの専門ニュースサービスHeartwireより
【12月7日】『New England Journal of Medicine』2007年12月6日号に発表された2つの研究は、新しく、そしてショッキングなニュースである。それは、今日の小児・十代で過体重と肥満の有病率が跳ね上がりつつあることから、近い将来の心疾患の爆発的な蔓延が予想されるという展望だ[1,2]。Dr Jennifer L Baker(予防医学研究所、デンマーク、コペンハーゲン)らによる1つ目の論文では、非常に大規模なレトロスペクティブ(後ろ向き)コホート研究によって、小児の肥満指数(BMI)が25歳以降の成人期での致死性/非致死性の冠動脈疾患(CHD)に有意に連関していることが示された。Dr Kirsten Bibbins-Domingo(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)らによる2つ目の論文では、コンピュータを使ったモデルの結果、現在の十代の肥満率に基づけば2035年にはCHD有病率が現在の5%から16%増えることが報告された。
CHDによる死亡率はまだまだ上がり続け、現在の十代の若者が35歳から50歳になるころには、19%も増えるだろう。「我々の研究の結果はある程度は予想されていた。しかし、心疾患と死亡が増えることは予想していたが、これほどの大きさで増えることには衝撃を受けた。」
子供のBMI、大人のCHD
Baker博士らは、学童として身長・体重が測定されているデンマーク人25万人以上における心疾患事象の発生率を調べ、500万人年以上の追跡を行った。博士らによると、成人になってCHDで死亡するかCHDの診断を受けた者は男性が10,235名、女性が4,318名おり、これらの事象は、男性では7歳から13歳までの、女性では10歳から13歳までのBMIに連関していた。
「今回の研究は、この種のものの中では最大であり、小児期のBMIが大きすぎると成人期での心疾患のリスクが増えることを初めて説得力をもって示した。」
記述によれば、小児期でのBMIが大きいほど、成人期の心疾患リスクが高くなる。例えば、Baker博士らの試算によると、13歳の男児の体重が平均よりも11.2 kg多いと、その子が60歳までにCHDになる確率は33%増える。
「その連関が直線的であったことに我々はひどく驚いた」とBaker博士は語っている。「BMIの閾値のようなものがあって、その閾値でリスクが劇的に上昇したり、横ばいになったりするものだと予想していた。小児は体重がますます増えつつあり、それもどんどんと低年齢化が進んでいるので、我々の研究の結果は、今の世代でのとても多くの小児に、将来の心疾患が差し迫っていることを示している。」
BMIに連関するCHDリスクは年齢が上がっても増大すると、Baker博士らは記述している。成人においてはBMIに伴って心疾患が発現するリスクは中等度だが、13歳まではこのリスクはもっと高くなる。「これらを総合すると、小児期のこの短期間であっても、介入を行って小児が適正な体重を達成・維持するのを助ければ、将来の健康が有害な結果となることから彼らを護ることができることを、我々の研究は示している」とBaker博士はheartwireに対して語った。
早期に蔓延するCHDを予測するコンピュータモデル
Bibbins-Domingo博士による論文では、2000年での十代における過体重蔓延率(男子が16.7%、女子が15.4%)のデータに、十代での体重が成人期での肥満につながる履歴傾向のデータを組み合わせて、その十代が35歳になる2020年における肥満蔓延率を、コンピュータを使って予測した。その分析によると、2020年の35歳での肥延蔓延率は増大して、男性が30%から37%、女性が34%から44%になる。現在の同じ年代の肥満蔓延率は男性が25%、女性が32%である。この率の増加によって若年成人におけるCHDの事象と死亡が上昇し、その傾向は中年期でも続くと著者らは予測している。Bibbins-Domingo博士らの計算によれば、2035年までに、米国1カ国で肥満によるCHD症例がさらに10万例増えると見られている。
この知見は、このコンピュータモデルが高齢者のCHDを予測したのではなく、一般的には心疾患の心配をしない時期である若年の成人で予測したものであるために特に衝撃的だったと、Bibbins-Domingo博士はheartwireに語った。「この年齢は、さほど頻繁には医者に行かない世代だ。働き盛りで家族も増え、心疾患はもっと先に起こる何かくらいにしか考えていない年ごろだ。実際には、現在の十代における過体重蔓延率が上昇している結果として、心疾患のパターンに変化が起こり、こうした若い世代で心疾患が見られ始めているのだ。」
ここで重要なのは、博士らの論文で調べているのは過体重による将来のCHDへの影響のみである点だ。過体重の小児はもっと早い時期に関連CHDリスク因子を発現する傾向も高いことは、Baker博士らの論文も含めた莫大な数の研究で示されているが、Bibbins-Domingo博士らのモデルではその可能性は含められていないのである。
「増えつつあるエビデンスを信用して考慮に入れるのであれば、我々の今回の試算はむしろ過小評価にあたる」とBibbins-Domingo博士がheartwireに語った。博士らが自分たちのモデルにBaker博士らの試算を組み込んでみると、CHD率の予測値は発表された論文に記載の値より大きくなった。「心臓でのCHD過程の発現の仕方に対しては、脂肪それ自体の何かや脂肪の分布が時間経過とともに有害な影響を与えている可能性があり、したがって、心臓の障害の一部はこうした早期の年代で進行する可能性があることを示すエビデンスが増えつつある」と博士は言う。
たくさんの未知の変数
Bibbins-Domingo博士らは、自分たちのモデルがすべてを考慮に入れているわけではなく、特に、高脂血症、高血圧、糖尿病、そして肥満自体といったCHDリスク因子に対する優れた予防薬や治療法が開発される可能性がそうした重要な因子の一つであることを認めている。
「例えば、糖尿病になる確率を下げ、肥満から劇的に戻せるような治療が将来登場するかどうかは分らない。したがってそうしたことはこのモデルには組み込まれていない」と博士は認めている。「ただしこれだけは言える。そうした介入は効果がかなり大きく、この傾向を変えることができるだろうし、かなり若い世代でそうした介入を行うべきである。若年成人や十代を何らかの療法で介入することで正すことができるようになるべきであり、その療法も薬の使い方をどうするというような考え方から変わるべきである。」
実際、この2つの論文に込められている最大のメッセージは、患者、医師、政策決定者はCHDの予防戦略や治療を始める場合にこれまで持っていた既存の概念を抜本から見直す必要がある、というものだ。今日用いられている降圧剤やコレステロール降下剤ですら、若年患者で試験が充分に行われているわけではなく、成人期のほぼ全体の長さにわたってこうした薬剤を使用し続けることの安全性を支持するエビデンスもほとんどない。
Bibbins-Domingo博士らの指摘によれば、博士たちの研究には移民による米国人口の変化や人口特性の推移についても考えに入れられていない。しかし、どちらかといえば過体重や肥満の蔓延率は少数民族で高く、博士らのモデルによる疾患予測は、アフリカ系アメリカ人、ラテン系、ネイティブアメリカンといった特定の民族人種集団において過小評価する傾向があると博士はheartwireに述べている。
政策面はともかく解決策は簡単
この2つの論文に関連する『Perspective』欄において、Dr David S Ludwig(ボストン小児病院、マサチューセッツ州)が、肥満の蔓延において重なり合う4つの時期についてと、有意義な対策が切り詰められた場合に必然的に立ちはだかる主要な障壁について述べている。Ludwig博士のPerspective記事に付随するオンラインインタビューの中で博士は、小児の肥満の問題に対する認識が高まっているにもかかわらず、この問題が将来に大きな影響を与えることが人々の間でほとんど理解されていないと指摘している。
「45歳の過体重の人が55歳には2型糖尿病を発現し、65歳には脳卒中、心臓発作、腎不全を起こすようなものだ。しかしその時計の刻みが10代で始まるのであれば、話は大きに変わってくる」と博士は言う。
博士はこの問題を地球温暖化になぞらえた。小児の肥満蔓延は「科学的エビデンスがすべて出そろうまでに行動を起こさなければならない差し迫った危機である」と博士は書いている。しかし地球温暖化とは違い、小児の肥満蔓延の解決策は、公益性を中心に据えることへの支持を得て包括的な戦略をとるならば、比較的簡単である。
「政治的には難しいかもしれないが、そうした簡単な決断と行動でもって蔓延率の増加を食い止め、最終的には蔓延率を下げられると確信できるだけの根拠が充分にある」とLudwig博士はオンラインの音声インタビューの中で明言している・
1. Baker JL, Olsen Lina W, Sorensen TIA. Childhood body-mass index and the risk of coronary heart disease in adulthood. N Engl J Med. 357:2329-2337.
2. Bibbins-Domingo K et al. Adolescent overweight and future adult coronary heart disease. N Engl J Med. 2007;357:2471-2479.
3. Ludwig DS. Childhood obesity?the shape of things to come. N Engl J Med. 2007;357:2325-2327.








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